優しい言葉

 

「こ・と・ぶ・き・君っ♪」

 

 

 

「きゃぁ〜!!!」

 

 

私は思わず持っていたお盆を振り上げてしまった。

 

 

耳元で息をかけながら呼ばれた名前。

 

 

反射的に加刈部長を思い出して"ゾワ"っと鳥肌が立つ。

 

 

 

 

しかし、振り返った先には…

 

 

「さ…佐伯部長…」
私の腕を取り、簡単に受け止めてる。

 

 

 

反対の手は額に当て、"くくく"とかみ殺した笑いをして・・・

 

 

「う"。わ…笑ってますね?」

 

 

 

人が怖い思いをしたって言うのに、この人は…

 

 

笑ってるなんて許せないんだから!!

 

 

そう思って睨んでいる私をよそに、彼は尚も"おかしい"と笑いながら私を見た。

 

 

 

「いい加減手を下ろしても大丈夫だけど?」
ふと見上げれば、振り上げられたままのお盆。

 

 

 

「わわわっ!ごめんなさいっ!!」

 

 

私は慌てて背中の後ろに隠した。

 

 

 

"ぶはははっ"彼はそれを見て更に笑い出すしまつ。

 

 

 

「ちょっと!、そんなに笑わなくたっていいじゃないですかっ!!私ずっと怖い思いして来たんですからねっ!!染み付いちゃってるんだから…」

 

 

言っててなんだか悲しい様な怖い様な気持ちになって来ちゃった。

 

 

 

思わずウルウルしてしまった私に彼が言った。
「・・・怖かったろうな。誰にも言えなかったんだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

え?

 

 

 

 

 

 

 

意外すぎて言葉を失う。

 

 

 

まさかそんな優しい言葉をかけるなんて…

 

 

 

「べ・・・別にいいんです。どうせ昔っからツイてないし。良い事ないんで」

 

 

 

 

「ふ〜ん。…自分からそんな事いってちゃ、そりゃそうなるわな〜!!」

 

 

そう言って彼は意地悪く笑う。