恋に落ちたら

"驚いて声も出ない"ってこういう事だったんだ…

 

 

 

しばらく私たちは黙ったまま居た。

 

 

だって、話が全く読めないんだもん。

 

 

 

 

部長の巧みな程陰湿なセクハラを、半ば諦め半分で受け続けてもうすぐ一年。

 

 

 

救世主のように彼が現れたかと思ったら、

 

「僕が4月から部長です」

 

 

そりゃすぐに"はい"って飲み込める訳ないよね。

 

――――――――――

 

――――――――

 

―――――

 

 

 

 

「…でさぁ!急に"4月から僕が部長です"なんて言うから驚いちゃって、私何も言えなかったよ;」

 

 

あのあと私と部長は、彼に促されるまま仕事場に戻った。

 

「結局何者なのか分かんなかったし…うちの課に間違いないんでしょ?」

 

 

昼休みの今、同期の蘭子(ランコ)と社内カフェでランチ中。

 

「てか、知らないのってアンタくらいよ。その今度"部長"になる彼は、『佐伯隆二』(サエキリュウジ)。社長の甥っ子よ。でも"ちゃんと力で認められたいから"ってその事を伏せてたの。」

 

 

へ…へぇ〜。

 

 

どっちにしても凄いんだ。

 

 

結局驚きが強くて何も言えない。

 

 

 

「ま、でもあんだけ格好いい容姿で、仕事がバリバリできりゃ〜噂もすぐに広まるし、結局すぐにバレちゃってるわけだけどね」

 

 

確かに。

 

 

彼を見た瞬間惹かれた。

 

スーツが似合ってて、爽やかな感じで…

 

髪も長い訳じゃないし、黒髪だけどオシャレだし…

 

 

――――ってやだ!!

 

 

何かこれじゃあたし…

 

「恋しちゃったみたいじゃん・・・」

 

 

「へ?・・・・あはっ!あ、あんたアイツに恋しちゃったのぉ?」

 

 

「ちょっ!!ちょちょちょちょやめてよっ!!!大声出さないでってば!」

 

慌てて蘭子の腕を掴む。

 

「あははっ!ごめんごめん!いや〜、まさか遥香までもがね…もてるわなぁ〜、憎いね!佐伯部長!!」

 

 

「もうっ!!やめてってば!そんなんじゃないしぃ!!」

 

 

私の必死の否定もむなしく、蘭子の中では私が恋した事になったみたい;